日本の美しさは、なぜ静かなのか
日本の美しさに触れたときの、
瞬きを忘れ
深い溜め息が溢れる
そんな瞬間が好きだ
神社仏閣を訪れると
壮大な空間を、極めて繊細な芸術が埋め尽くしている
欄干に施された彫刻
天井画
辺り一面を見渡せば
細部に宿る、この美しい芸術を創り上げた職人の
息遣いを感じることができる
殊に、神社仏閣においては
その多くが手仕事により成されたことを思えば、
なぜこれほどまでに
緻密で、強く、揺るぎない創造物を生み出すことができたのか
畏怖とも言える感情が溢れてやまない
そんな揺るぎなさに向き合うと
かつての職人達の輪郭が朧気に現れる
その対話が
日本の美しさの静けさを生むのだろうか
その静けさを生むために
どれだけの時間と労力と想いが込められたのだろうか
静かに
芸術そのものが、
その歴史が、
それを構成するすべてが、
ただ、静かにそこにある
しかし静けさの裏側には
目の前の一点に只管向き合った職人の
瑞々しい血液が今も巡っている
繊細な仕上がりと
滾(たぎ)るような血液
ふたつの相反する性質が
深く、美しい静けさを生む